ちぐはぐ遠距離恋愛



あたしはそのまま走り抜ける。

向かうところは、あたしの家だ。


もうこんなとこには居られない。

居たくない……。


これ以上、誤解なんてされたくないから。




「真白ちゃんっ!」




あたしの肩を掴んだのは、高杉先輩だった。




「どうして?」

「え?」



どうしてよ。

もうこれ以上、邪魔しないでよ。



「真白ちゃん?」



そんな顔であたしを見ないで。

そんな声であたしを呼ばないで。



『真白』って、言わないで…。




それだけで――ダメになる。



「真白ちゃん」

「やめ…っ」

「俺と目合わせろ」


グイッと先輩の方を向かされる。


「好きだ…」

「…やっ」


こんなことになるなら、やっぱり祭りなんて来るんじゃなかった。


「でも真白ちゃんは、村野が好きなんだろ?」

「………っ!」


次から次へと襲う悪夢。

早く醒めてほしい。


こんなこと、言わせないでほしいのに……。


「分かってんなら、もうやめてよ…」

「あいつなんかじゃダメだ、俺にしろって…」

「やだ…っ」


あたしは耳を塞ぐ。

結局、皆こうなの?


「俺が真白を幸せにしてやるよ」


先輩があたしの背中に手を回してくっついた。

温かくなんてない。

あたしの体も心も、冷え切っている。


「そんなの、あの子と一緒じゃない……っ」


あたしを幸せにしてくれるのは、誰だかなんてわからないじゃない。

これじゃあ、先輩だって、あの彼女と一緒でしょう?


「俺は別に…」

「じゃあ何でこんなふうに言ったんですか?」

「それは…」

「中途っ、半端なことして……っ、

これいじょ……っドキドキさせないで……!!」




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