ちぐはぐ遠距離恋愛
先輩の体を押して、あたしはまた走る。
走りつづけて十分足らずでやっと家についた。
「あれ、姉ちゃんもう帰ってき…」
凌の言葉を全部聞き取らず、あたしは自分の部屋のドアを閉めた。
嗚咽が漏れる。
「ふ……っ、う…っ」
これが噂のモテ期なのか?
奈緒美は嬉しそうだった。
いや、全国の健全なる女子は嬉しいものなのかもしれない。
でも、こんなのがあと二回も来るって?
(ムリだよ、そんなの)
あたし、死んじゃうよ!
〜♪〜♪
彩夏からだった。
「もしもし…」
《真白?》
「彩夏ぁ」
《村野が電話してやれって》
「えっ…」
《大丈夫?高杉先輩も暗い顔して戻ってきて…。今真白どこ?》
「家…」
《あ、そっか…。詳しい話、いつか聞かせてね?》
「え」
《今じゃ話せないでしょ?落ち着いたらまた電話してね》
「…ありがとう」
彩夏の電話で、涙腺が戻った。
電話を切る。
リビングに入るとインターホンが鳴った。
「…はい」
「諒太です」
「………は?」
あたしはドアを少しだけ開いた。
確かにそこに居たのは諒太。
でも、……将ちゃん付きだった。
「何で…」
「これ、母さんから」
諒太がぶっきらぼうに渡してきたのは肉じゃがだった。
「夕南さん、帰ってこないんだろ」
「あ、うん」
「だから」
「ん」と言ってあたしに押し付ける諒太。