ちぐはぐ遠距離恋愛



先輩の体を押して、あたしはまた走る。


走りつづけて十分足らずでやっと家についた。



「あれ、姉ちゃんもう帰ってき…」


凌の言葉を全部聞き取らず、あたしは自分の部屋のドアを閉めた。



嗚咽が漏れる。



「ふ……っ、う…っ」



これが噂のモテ期なのか?


奈緒美は嬉しそうだった。

いや、全国の健全なる女子は嬉しいものなのかもしれない。



でも、こんなのがあと二回も来るって?


(ムリだよ、そんなの)


あたし、死んじゃうよ!


〜♪〜♪


彩夏からだった。



「もしもし…」

《真白?》

「彩夏ぁ」

《村野が電話してやれって》

「えっ…」

《大丈夫?高杉先輩も暗い顔して戻ってきて…。今真白どこ?》

「家…」

《あ、そっか…。詳しい話、いつか聞かせてね?》

「え」

《今じゃ話せないでしょ?落ち着いたらまた電話してね》

「…ありがとう」


彩夏の電話で、涙腺が戻った。


電話を切る。

リビングに入るとインターホンが鳴った。


「…はい」

「諒太です」

「………は?」


あたしはドアを少しだけ開いた。

確かにそこに居たのは諒太。

でも、……将ちゃん付きだった。


「何で…」

「これ、母さんから」


諒太がぶっきらぼうに渡してきたのは肉じゃがだった。


「夕南さん、帰ってこないんだろ」

「あ、うん」

「だから」



「ん」と言ってあたしに押し付ける諒太。



< 103 / 420 >

この作品をシェア

pagetop