ちぐはぐ遠距離恋愛
凌が中からヒョッコリと顔をだす。
「あ…姉ちゃん、大丈夫?」
「……うん」
とは言ったもののあてたところをまだ摩りつづけた。
「何?ぶつけたの?」
鼻で笑いながら聞いた凌。
「うるさいわね…。てか一人で何してたの?」
「一人…?」
「ママは?帰ってきた?智春さん帰っちゃったかなぁ」
「まだいるよ」
「え?じゃあ帰ってもらわなきゃ!だって村野家の夕飯……「大丈夫だよ」
凌があたしの言葉を遮って言った。
(大丈夫…って、あんたが言えることじゃないでしょ)
と、あたしは思いながら凌を見つめた。
凌は嬉しそうに自分の部屋の扉を大きく開けて、中を見せた。
テレビの前で、コントローラーを持ちながら座っていたのは………。
「り…諒太?!」
「どーも」
ぺこっと頭を軽く下げた諒太。
(な…な…っ)
「智春さんが呼んだんだ。母さんすぐ帰って来れなさそうだから、晩御飯を家で食べさせていいってことで…」
「しょ…将[しょう]ちゃんもいる?」
「今日はバイトだって」
「そう…]
「智春さんが起きたらリビングに行ってって」
凌はそれだけ言って扉を閉めてしまった。
諒太とゲームできるのが嬉しいんだろう。
きっとまたピッタリくっついて一緒にテレビに目線を向けているに違いなかった。
「………ったく」
あたしは頭を摩りながらリビングの扉を開けた。