ちぐはぐ遠距離恋愛
少したって凌が吸入機を持ってきた。
それをあたしの口の中に入れる。
あたしはしっかりと諒太の服を掴んで深呼吸をした。
「発作って、喘息?」
諒太が凌に聞く。
「うん。時々出るんだ。最近は多いかな」
あたしは、生まれながらの喘息持ちだった。
症状は酷いレベルだ。
成長するにつれ、治まってきたが、一度出ると危ない。
「まだ治ってないのか…」
何となく悲しそうに言った諒太の顔が見えた。
「とりあえず、ベッドに運ぼう」
落ち着いてきたあたしから吸入機を取り上げて凌はそう言った。
頷く諒太はあたしをそのまま横抱きにする。
―――――いわゆる、“お姫様抱っこ"だ。
意識がはっきりしたあたしはもう顔を上げられなくて………。
憎しみを感じながらも、
その温かさに身を委ねた。
(時間がとまればいいのに………)
そう願いながら、あたしは諒太を掴む力をギュッと入れ直した。