ちぐはぐ遠距離恋愛
「……っ」
むしゃくしゃして、近くのフェンスを蹴ろうとした。
その時―――。
ガコンッと音をたてて屋上の扉が開いた。
「は?」
知らない、人だった――。
(見たことない。先輩かな?)
「……ねぇ、大野真白?」
「はっ?」
(何であたしの名前知ってんだ?)
その男の人は肩眉を下げてハハッと笑った。
それが何だか、幼い子供のような笑顔だった。
「そんな怖い顔するなよ、真白さん」
「なっ…」
「結構有名だよ?見た目は美少女、中身は男のなかの男、ってね」
(なんじゃそりゃ…っ)
フワフワと力が抜けた。
てか、それなんかアニメのパクリっぽい言い草だし……。
あたしはポカンとだらしなく口をあける。
「かわいいね、真白さん」
「か…っ?!」
(かわいい?!)
思わず後ずさり。
「それにさ、フェンス、蹴ろうとしただろ?」
「えっ」
「真白さんが蹴ったら、凹んじゃうよ」
「な゙……っ」
(こいつ……っ!)
「俺、高杉昂耶[たかすぎ こうや]」
「はぁ…」
また幼い顔で笑う先輩。
その顔で、時計を見上げた。
「もうチャイム鳴るな」
「はぁ…」
「さっ、行くか」
「さようなら」
あたしは当たり前のように――いや、当たり前にその場に立って頭を下げた。
「いや、何当たり前のように立ってるんだよ」
「は…?えっ、ちょ……っ」