ちぐはぐ遠距離恋愛



同じように「………」と言葉を無くす先輩。

だけどこの子は、『返事は後で』なんてこと言わずにただじっと待っていた。




葵先輩たちも、彩夏と優香子に、もちろんあたしも。
同じように何の言葉も発しず先輩が口を開けるのを後ろから眺める。



あたしたちのこの周り、


この空間だけ―――





時が止まったように動かなかった。





今にも開きそうな先輩の口から『よろしく』って聞こえそうだった。

でも、なんでだろう。



このイライラする、モヤモヤした……。
凄く嫌な感じ。


(これを感じてるのはあたしだけ?)


そう思うような、他人には分かりそうにない複雑なもの。



少し潤んだ、大きい瞳で先輩を見つめる女子。

その顔は何となく自信がありそうにも見えた。


何ていうか、

この人は絶対OKを出す。
だってこのあたしが告白してるんだもん!

みたいな……?


それに、作り上げたような内股チックな姿勢と、表情。



性格悪そうにしか、見えないよ。



って、どうしたんだろう。あたしは!!

この子を見つめる度に、悪そうな部分ばっかり見つけちゃう。

良いところなんか、一つも捜し当てられない。



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