若恋【完】
しっかりとふたりの手を繋ぎあわせる。
「ひかる?」
「うん」
「お兄ちゃんって呼んでくれるか?」
「あたりまえじゃない」
まだ幼さが残る歳の離れた妹のひかるに受け入れられて、仁お兄ちゃんはわたしから顔を背けて空を見上げた。
「やべ、泣きそ、」
そんなふうに呟いて仁お兄ちゃんが背を向けた。
「お姉ちゃん」
「ひかる、ごめんね。事件に巻き込んで。お父さんお母さんに心配かけて…」
「お父さんもお母さんもお姉ちゃんが元気でいてくれたならそれだけでいいって言ってたよ。それにわたしはお父さんもお母さんも守れるように空手を始めたんだから」
「………」
「お父さん、お兄ちゃんに会ったらよろしくって言ってた」
わたしはふたりの話を邪魔しないようにそっとその場を離れて屋敷に入った。
―――ひかる、ありがとう
ひかる、ありがとう。