若恋【完】
奏さんに連れられて丸眼鏡さんが安置されていた部屋を出ると、
榊さんをはじめ、仁お兄ちゃん、毅さん、前広さん、一也さんに拓哉さん、その他にもたくさんのひとがスーツ姿で並んでいた。
「行くぞ」
一言告げて奏さんが歩きだすと人が割れて道ができ、わたしもその後をついていく。
屋敷前にはずらりと高級車ばかり数十台並んでいた。
「りお、乗れ」
奏さんが言い、ドアを仁お兄ちゃんが開ける。
奏さんとわたしが乗り込むと、前に二台、後ろに数台同時に走り出した。
「若、正面に10台、裏に10台、一般車両を入れないよう車止めに10台用意しました」
「………」
奏さんは答えない。
わたしをチラッと横目で見ただけだった。
すべて予定通りということらしい。
夜明け前の道を走り、龍神会のビルの前に車は停車した。