若恋【完】



龍神会前の正面に車はつけられた。

つい二時間くらい前にわたしたちが丸眼鏡さんを抱えて後にした場所。

正面ガラスが銃弾で砕け散って壁にはあちこちに傷があったり、赤黒い汚れがあったり…


先に毅さんや前広さん、一也さんや拓哉さんたち仲間が入って行ってる。

ここを抜け出した時にはわたしたちの後を追いかけてきたひとたちがいたけど、今は姿がない。



「りおはここまでだ」

奏さんはわたしがこれ以上前に進むことを拒んで、

「榊」

榊さんを呼びわたしを車に戻した。


榊さんは怪我しているし、わたしには見せたくないものがビルの中で繰り広げられるんだろうって容易に想像できた。


目の前にある立派なビルを見上げる。



「龍神会はもうダメですね。ボスがいなくなると同時に我先にと逃げ出して城を明け渡すようじゃおしまいです」

榊さんがポツリと呟いた。



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