若恋【完】
労るような奏さんの声に顔をあげると、立ち上がった奏さんがわたしを包みこむように抱き寄せた。
「おまえを失うかと思った」
ぎゅっと力を込めて抱き締める腕の中でわたしも奏さんの胸にすがる。
「…ごめんなさい」
「無事ならそれでいい」
悲しみで潰れそうになってた気持ちが奏さんの腕の中で凪いでいく。
穏やかな波に変わっていく。
細かく震えてた奏さんの指先と、疲れた顔で、どんなにわたしを心配してくれていたのかわかる。
「ごめんなさい」
「おまえと腹の子が無事ならそれでいい」
前髪の毛を掻き分けて額にくちづけてくれる。
頬にも優しいキスが降りてくる。
「おまえが愛しい」
「…わたしもだよ」
わたしも奏さんの胸に頬を寄せる。
わたしの全部で奏さんへの気持ちを伝えたい…