若恋【完】
わたしを見つめる瞳は優しい。
「あんたは何も心配しなくていい。ゆっくり休め。悪いようにはしない」
その言葉に何も言えなくなる。
「これ以上傷つけるようなことは絶対にさせない。だからゆっくり休め」
「………」
「頼む」
どうしてそんなに優しくしてくれるんだろう。
わたしが勝手にチンピラの前に飛び出しただけなのに。
わたしの怪我はあなたのせいじゃないのに。
「俺の名は、大神奏」
おおがみ?そう?
「大神物産の三男坊だ」
優しい手がわたしの頭を撫でた。何度も幼子をあやすように。
霞んでいく頭の中に、奏さんと名乗るひとの姿と名前が焼き付いた。