若恋【完】
今回、クリスマスパーティの余興で中国雑技団のような技を披露してくれる芸人を呼んであると話をしていたことを思い出す。
わたしは仁お兄ちゃんの袖をひっばった。
「奏さんを?」
「若を?狙う?」
顔を見合わせる。
「大神オヤコを殺ったアトノ逃げる手筈は?ドウなってるノ?」
「混乱してニゲダス客に紛れて非常口から下に降りるの」
「ソノアとは?」
「ボスが車と故郷ヘノ飛行機のテハイしてくれるッテ言ってたワ」
「この仕事が終ったら帰シテくれるッテ本当に?」
「そう言ってタワー」
「もう体ヲ売らなくてモいいんならナンだってするわ」
仁お兄ちゃんとわたしが声を殺して聞いていることを知らないふたりは、小声でも響くレディースルームでそんな危ない会話をしていた。
今飛び出していけばふたりのうちのひとりは捕まえられるかもしれない。