若恋【完】
何分小さな扉の中に隠れていただろう?
仁お兄ちゃんがわたしの手を引いてこっそりと抜け出すまで、頭の中でいろんな光景が浮かんでた。
「りお、いくぞ」
「どこへ?」
「決まってるだろ。若のとこだ」
手を繋いで小走りに歩く。
何事もなかったような顔をして、でも内心焦ってわたしの手を引いていく仁お兄ちゃんの後ろをついていく。
ワインの山を抜け、
美しく着飾った招待客や物腰の柔らかい紳士たちの間を抜け、舞台近くでお兄さんたちと談笑していた奏さんの前に出た。
一瞬にして談笑していた奏さんの顔色が変わる。
「仁、りおどうした?」
血相を変えて乱入してきたわたしを奏さんが人目も気にせずに包み込む。
「りお、どうした?なにかあったのか?」
周りを見る。
わたしが震えてるのに気づいたんだろう。
すぐに席を外してわたしの話に耳を傾けてくれた。