若恋【完】
「…女のひと、ふたりが奏さんとお父さん、お兄さんを狙ってるの」
「!」
奏さんが身動ぎした。
「わたし、ふたりの会話を聞いちゃったの。仁お兄ちゃんも一緒に聞いたの」
「…どういうことだ?」
奏さんの目が獲物を狙う鷹のように鋭くなった。
「たぶん今日の余興で踊る奴らの中に刺客が紛れ込んでる」
「なんだって?」
仁お兄ちゃんの付け加えた衝撃的な言葉に絶句する。
「ロシア製のチャカを持ってるみたいだった」
「………」
「ふたりの女のバックには彼女たちがボスと呼んでる黒幕がいるらしい」
「………」
「狙うは組長と、若」
「………」
「ふたりはもしこの計画がうまくいかなかったら毒を飲むらしい」
「………」
「その毒もはじめから黒幕が用意してたみたいだぞ。事が上手く行ってもいかなくても彼女たちは始末される。故郷には帰れない」
「―――え?」
「………」
わたしが顔をあげると奏さんが目を反らした。