若恋【完】
「着物?」
「ああ、日本の着物は外国人にはウケるからな」
「へえ」
感心していたら、年配の女性の他にもわたしの周りに若い女性も集まってきた。
仁お兄ちゃんはわたしに集まってくる人に警戒してる。
「キモノ!」
「\@&%$」
「#\&$#$」
日本語じゃない人が大半で英語も中国語も韓国語もフランス語も全部ダメなわたしはすっかり宇宙人になってしまった。
みんなが集まってきてるその中で、わたしに見向きもせずに化粧をしている女性がふたり。
「仁お兄ちゃん、ふたりって日本語上手だったよね?」
わたしの近くにはレディースルームで聞いた声のひとはたぶんいない。
日本語が流暢で聞きやすいイントネーションだったふたりとは違うひとだって思った。
「あ、あのふたり、」
「ああ」
わたしは振り袖が珍しがられて動けない。
仁お兄ちゃんが念入りに化粧を施しているふたりの様子を窺う。
「―――あのふたりだ」
ギリッと歯ぎしりした。