若恋【完】


「仁お兄ちゃん」

「ああ、たぶんあのふたりだと思う」

「声を聞けばわたしわかる」

「聞いてみろ」

「うん」



わたしは少しだけ彼女ふたりに近づいた。


「………」
「………」

微かに聞こえる声は確かにあの時に聞いた声に似ている。

もっとちゃんとした声が聞きたい。
もっと確信がほしい。


思いきって話し掛けた。



「化粧素敵ですね」


ふたりは同時に顔を上げた。


「ありがとうゴザイマス」

「似合いマスカ?」


ふたりの声がドンピシャ!

レディースルームで聞いた声がそのままだ。

響きもいい。あの物騒な会話をしていた声がそのまま。


「日本語上手なんですね」

他のメンバーがあまり上手ではなかったけど彼女ふたりはとても上手だったから。

ふたりはわたしがあの時に扉の内側で会話を聞いていたなんて思いもしない。



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