若恋【完】


ふたりの手をしっかり握ってたら、涙が浮かんできた。


同じ裏の世界に関わってても、わたしは奏さんに大事に守られて、彼女たちは喰いものにされて。

命じられるまま体を売り、命じられるまま人を殺そうとして、失敗したら毒を飲めと渡されて。

こんな扱いをするひとが許せなかった。



「桐花さん、」

「ナニ?」

「桐花さんや桃花さんに毒を飲めって言った酷い人は誰なの?」

桐花さんが屈んでわたしの涙を拭い、その手がピクリと反応した。



「…その名前を言ったらドウするの?」

「わたしは聞いた名前を奏さんに告げるだけ。…ヤクザな世界にはヤクザな法律があるだろうから…」



「………」


桐花さんが一瞬黙った。

教えることには拒否なのかも。


「無理に教えなくてもいいわ。ごめんね変なこと言って」




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