若恋【完】


グラスが割れて赤い絨毯に散乱する。

その上を乱れた手負いの猛獣が転げ回る。

グラスの破片が猛獣の服を切り刻み触れたものすべてを血で赤くしていく。



前広さん、一也さん拓也さん、そして毅さんが転げ回る森内狸の首を押さえた。



床に押さえつけられた森内狸の歪んだ顔が、その濁った瞳が少し離れたところにいたわたしをギッと睨み据えた。



憎さ。妬み。嫉妬。苦しさ。悲しさ。

もっとたくさんの感情がわたしに向けられてる。



「おまえさえいなかったら!!」


押さえつけられた腹の底から絶叫する猛獣。



「俺の娘は若頭の玩具じゃない!!」





―――え?






わたしは息を飲んだ。

猛獣から自然に目が離れ奏さんに移る。




森内狸の娘がどうしたって?

わたしがいなければ!!って叫んだ悲痛な声はどういうこと?

奏さんが何をしたっていうの?




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