若恋【完】
「娘は若頭の玩具じゃない!!」
弾かれたように奏さんが顔を上げわたしの瞳を見つめ返す。
待って。
奏さんが森内狸の娘をどうしたって言うの?
わたしの目が涙で歪んで奏さんの姿がぼやける。
過去を気にしない。
奏さんの過去はわたしも聞いたから。
だけど、その肉親である父親はどんな思いで奏さんの背中を見てきたことだろう?
ふと、丸眼鏡さんのことを思い出した。
「玩具になどしてねえ」
奏さんは無理強いして女を連れ込んだことはないと榊さんも仁お兄ちゃんも言ってた。
「りお、若を信じろ」
奏さんを見つめてたわたしに仁お兄ちゃんが静かに言った。
「うん」
わたしは奏さんを信じてる。
森内狸の叫びは確かに合っていたのかも知れないけど、奏さんやお父さんが暗殺されていいものじゃなかった。