若恋【完】
「あなたの目指したのは自分で天下を取ることでしょう?」
榊さんが森内狸のそばにしゃがみこんで髪を掴み上げ顔を上向かせた。
「娘を若にとけしかけといて、りおさんが現れ失敗したからと言って今度は同情を引いて助かろうとするんですか?」
―――えっ?え?
「汚いやり方はわたしは好きではありません」
ぐっ
顔を絨毯に何度も打ち付けて何度目かで鼻血を吹き出した森内狸をじっと見た。
「若を侮辱するのは許さない」
「…榊さん」
冷めた声音で告げ、何度も猛獣を打ち付けて潰す。
「榊、そのくらいにしとけ」
お父さんが榊さんに命じると、榊さんは最後の仕上げにと森内狸の腕を靴で踏んで踵で捻り上げた。
バキボキ
バキボキ
骨の砕ける音がして猛獣が咆哮を上げた。
「うあああぁっ!」
螺曲がった腕がぶらんと垂れ下がり、その腕を体に抱えてのたうち回った。