若恋【完】
「榊は普段は冷静だが、何かがあると誰よりも残酷になれるからな」
氷のような冷たい眼差しに周りにいた誰もが榊さんに声を掛けられないでいる。
仁お兄ちゃんはわたしにこっそりと呟いた。
「榊がマジで怒ってやがる。若とおまえをこんな大勢の前で傷つけたからだな」
「森内を連れてけ」
転げ回り床を這う森内狸を奏さんが冷ややかに見下ろしてる。
「おまえの処分は後だ」
極刑は免れない。
裏の世界ではもう生きていけない。奏さんのお父さんが慈悲をかけたとしても、周りが反対して結局は辿る道は同じだと思う。
暴れる体を取り押さえられ、毅さん、一也さん、拓也さんに乱暴に抱えられるようにして会場から出された。
「ふざけんな、俺は悪くねぇ!」
「若造、榊、このままじゃ済まさねえぞ!」
「狩野っ!てめえも蚊帳の外にいるんじゃねえぞ!!道連れだ!!」
喚いている声が少しずつ遠ざかっていく。
「狩野?」
『東の森内に、西の狩野』その勢力が大きすぎて奏さんのお父さんも蔑ろにはできない存在になっていたという。
「道連れだってどういう意味かな?」
「案外そっちが今回の黒幕だったりして」
「!!」