危ない家庭教師〜美男兄弟の誘惑〜
グラッと視界が揺れ、転ぶと思った瞬間、何か、いや誰かに体を支えられた。


「おっと、大丈夫ですか?」


気付けば、私は章さんに体を支えられていた。


「あ、すみません……」


「綾子ちゃん、君は……泣いてるのかい?」


「あ……」


私は慌てて濡れた頬や目を手で拭った。


「涼に何かされたんだね?」


「あ、いいえ、何でもありません……」


「嘘はよくないなあ。話してごらん? 僕があいつをとっちめてやるから」


「いいえ、本当に何でもないんです」


私は章さんに抱き着く形になっていて、それが気まずくてモゾモゾ動いたけど、章さんは私の背中に回した手を緩めてくれなかった。


と、その時。階段を降りて来る涼の足元が私の目に入った。


< 134 / 191 >

この作品をシェア

pagetop