Addict -中毒-
その瞬間私は手を振り上げていた。
バシンッ
私の手のひらは相澤の頬を、いっそすっきりするぐらい気持ちの良い音を立てて叩いた。
「銀座の女を舐めんな!
あんたに彼の何が分かるって言うのよ!!私はそんな安い女じゃない!」
私の怒鳴り声は寝室を震わすように満たした。
気丈に睨み返すと、相澤はさっと顔色を変えた。
まるで精巧な仮面をはがしたように、その表情は醜く歪んでいた。
どうやら私は相澤のカスみたいなプライドを傷つけたようだ。
さっきまでの余裕の表情を拭い去り、顔に怒りの表情を浮かべ、着ていたニットを強引に捲り上げる。
「やっ………!」
叫び声を上げたときだった。
「女に乱暴するなよ。このゲス野郎」
相澤の背後に立ち、腕を組んだ啓人が足で相澤の頭を押さえ込んで、冷たい視線で相澤を睨み下ろしていた。
啓人に足蹴にされ、びっくりしたように相澤が顔をちょっとだけよじる。
「………お前……」
「てめぇにお前呼ばわりされたくねんだよ。この変態野郎」
啓人は眉間に皺を寄せ、いつかのバーで見た冷めた目で相澤を見下ろしていた。