Addict -中毒-
窓を打ちつける雨の音がさっきより小さくなった。
サラサラとした雨音をぼんやりと聞きながら、私は啓人の腕の中でうたた寝をしていたみたいだ。
「ぶっ壊してやりてぇな」
彼の声で、うたかたの眠りから引き戻された。
まるで現実に引き戻されたかのように、その言葉は私を刺激する。
初めてベッドを共にして、情事のあとの甘い睦言にはあまりにも似つかわしくない……
物騒な言葉だった。
私がちょっと頭を上げ彼を覗き込むと、彼は窓の方を凍りつくような冷たい視線でじっと睨んでいた。
何もかも遮断するような、射る様な視線。
また―――だ……
彼は私の視線に気づくと、顔を戻した。
「あ?起こしちゃった?」
照明を落とした暗い部屋に―――
彼の笑顔だけが窓から侵入する夜景の光に照らし出されていた。
嘘くさい
笑顔だった。