Addict -中毒-
「………誰?ママが他のお店からも呼んだのかしら」とアキヨは他のホステスに耳打ちしている。
「お久しぶりね、アキヨ。月香よ。あなたは覚えてないかもしれないけれど」
私は口紅をポーチにしまい入れると、余裕の表情でにっこり笑いかけた。
実際、私には御曹司争奪戦に興味がない。
ただ萌羽を応援したいだけだ。
「ユエカ姉さん……!」
アキヨもようやく思い出したようで、そのすぐ隣で「誰~?」とアキヨに良く似た雰囲気のホステスが聞いていた。
アキヨはちょっと面白くなさそうに目を細めて、そして口の端に笑みを浮かべた。
「萌羽姉さんが№1になる前、ずっと№1だった先輩。確か…結婚されたんですよね。相手は金持ってるけど、冴えないおっさん。
月香姉さんって絶対枕はしないって言う営業スタイルで身持ちが固いので有名だったのに、やっぱり金目当てじゃない」
アキヨがキャハハと笑い声を上げた。
「ちょっと!」萌羽が眉を吊り上げて、今にも手を上げそうな勢いだ。
私はその振り上げそうになった手をやんわりと制した。
「そう思うのなら、自由に思ってくれてていいわ。私のことを悪く言うのは構わない。
でも蒼介のことをそんな風に言うことで―――
あなた自ら自分が負けていることを証明しているのよ」
ポーチをバッグにしまい入れ、私はまっすぐな視線をアキヨに向けた。
アキヨが顔を青くして、唇を結ぶ。