Addict -中毒-
「銀座のマダム・バタフライっちゃ一元さんお断りの超高級クラブじゃん。そんなところ、俺が出入りするはずがないだろ?」
とちょっと乾いた笑いを漏らす。
“俺じゃない”って言葉に多少引っかかりもしたけど、彼の返事でその考えもすぐに吹き飛んだ。
第二印象。
生意気なガキ。
「お待たせいたしました。XYZです」
ユウくんと呼ばれたバーテンが、彼の前にカクテルグラスを置く。
「いいね。これ以上にない最高って意味のカクテルか」
彼はグラスを持ち上げると、ふいうちに私を見てきた。
ぞっとするぐらい色っぽい笑みを湛えて。
「隣にはこれ以上にない最高の女」
彼は私のグラスに勝手にグラスを合わせ、音を鳴らすと「乾杯♪」と言ってグラスに口をつけた。
「ありがちなくどき文句ね。でも、私はあなたみたいな子供と付き合ってる暇はないの」
じゃあね。
と言い置いて、私は席を立った。
「“ユウくん”悪いけど、チェックお願い」
バーテンは苦笑しながら、レジに回り込んだ。
隣でXYZを飲んでいた彼は喉の奥でくっくと笑うと、
「おもしれぇ女」と言って、一気にグラスを煽った。