Addict -中毒-


じりじりした思いでエレベーターを待っていると、彼が追いかけてきた。


その気配を感じたけれど、振り向かなかった。


振り向いたら彼の思う壺だったから。


それだけはどうしてもイヤだった。


早く来てよ!苛々した面持ちでエレベーターが昇ってくるのを見て…というか殆ど睨んでいた。


「待てって」


私の背後に立った彼が、後ろから腕を伸ばしてきた。


背が高い。私の頭が彼の肩先にあった。


彼の体と私の体が密着して、体温が伝わってきそうなほど近くで彼を感じた。





私は彼の気配から逃れるように、左に一歩退こうとした。


だけど、その行く手を彼のもう一方の腕が阻む。


私は彼の腕の中で何とか振り返った。


ちょっと睨み上げると、


「人を呼ぶわよ」と声を低めた。






「呼びたかったらどーぞ。その前にその唇を塞ぐよ?」






「何言って…私ができないとでも?」


彼を睨むと私は、息を吸い込んだ。


「誰…」


“か”と言おうとした瞬間





―――私の唇は、彼の唇によって塞がれた。






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