Addict -中毒-
何もかも分からなかったのに―――何もかも一つに繋がった気がした。
彼が実は育ちのいいことを隠したがっていたこと。
お金持ちだって言うことをあからさまに自慢しなかったこと。
そして―――
『あなたは別れた家内に少し雰囲気が似ていらっしゃる』
ふいに会長の言葉が過ぎり、私は最後の謎がようやく解けた気がした。
啓人が私に執着するわけを―――……
気付いているのかしら?気づいていても彼はそれを受け入れようとはしないわね。
天邪鬼のぼうやだから。
クスッと小さく笑みを漏らすと、啓人は不思議そうに私を見つめてきた。
「なに?」
「何でもないわ。ただ、ちょっとあんたが可愛く思えただけ」
啓人は心外そうにするかと思いきや、彼は口の端に笑顔を浮かべた。
「月下美人てさ、こんな夜に花を咲かせるんだろうな」
何かを考えるように物憂げに遠くの方に視線を投げかけ、啓人がぽつりと漏らす。
「今は冬よ。月下美人は夏に咲く花よ」
「でも紫利さんの家にはあったじゃん。液体に入った月下美人。何あれ。ホルマリン漬け?」
「そんなわけないじゃない。あれは焼酎よ」
「焼酎?へぇ飲んでみたいな。どんな味がするんだろ」
啓人がちょっと子供のような無邪気な笑顔を浮かべた。
私はその隣でそれを眺めながらも、
「あれはダメ」と答えていた。
「何で?」
「あれは旦那にもらった花だから」