Addict -中毒-
「おかえりなさい、あなた」
私は玄関口で蒼介を出迎えた。
「ただいま。この前も来たと思うけど、相澤くん。覚えてるかな?」
蒼介はそう言って相澤という若い男を私に紹介してくれた。
蒼介とさほど変わらない背に、ひょろりと細い体。神経質そうなメガネをかけている。
「ええ。覚えているわ。どうぞ」
私はにっこり営業用の笑顔を浮かべて、彼らを家に招きいれた。
ええ、覚えているわ。
この男の好色そうな視線は、私をいつも嘗め回すかのように追いかけて来るから。
すぐ後ろをついてくる相澤に向けて私は内心で毒づいた。
そしてふいにまたも記憶が蘇る。
相澤とあの歳若い彼―――ケイトは似たような年齢だろう。
でも、ケイトとは何もかもが違う。
彼が身に纏っていたあの華のようなオーラの少しでも
この相澤にあったのなら
私も本当の笑顔を浮かべることができたかもね。
ううん。
私も大概天邪鬼だから、意地悪の一つでも言ったかもしれない。
だけど相澤にはそれを言う価値もない。