Addict -中毒-



息の詰まるような相澤との三人の食事を終え、彼が帰っていったあと、深い夜がやってきた。


先に風呂をあがった蒼介が、寝室に置かれたスーツケースを眺めている。


「ごめんなさい。やりっぱなしで」


「いいよ。出発は明日だっけ?」


「ええ。そのつもり」


スーツケースの蓋を閉めて、私は蒼介を見た。


身長の低い彼を見ると、ほとんど見上げることはなく、すんなり視界に入れることができる。


あの彼とは全然違う。


でも比べてはだめ。


私は忘れたいのよ。






「蒼ちゃん」






私は彼の細い首に腕を回した。


「しよ?」


彼の耳元で甘く囁くと、彼の青白い頬にピンク色がさした。


いつまでたっても付き合いたてのほやほやカップルみたいな反応が可愛くて、その顔を見るのが好きで、私は挑発的に少し笑った。


蒼介の腕がおずおずと私の背中に回る。


感触も体温も―――そうなるまでの流れも、彼とは……ケイトとはまるで違うその腕に抱きしめられて、私も蒼介の首に回した腕にほんのちょっと力を入れた。





忘れさせて。




あの男を。



ケイトを―――







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