Addict -中毒-
次の日、私が目覚めると蒼介の姿はなかった。
私は小さく吐息をつき、旅行に出かけるための準備にとりかかった。
―――
午前11時。
成田空港に到着して、飛行機の時間をチェックし、チケットを取ると、出発ゲートへ歩き出した。
平日だというのに空港を利用する客が多い。
人と人の波を縫って、私がスーツケースを引いた。
荷物詰めすぎたかしら?重い……
なんて思ってのろのろ歩いていると、人の波を縫ってフワリと覚えのある香りが香ってきた。
目を開いて、キョロキョロ辺りを見渡す。
仕事で飛行機を利用する客のなんと多いこと。
スーツを着た男性が意外に多いことに少しだけ驚いた。
だけど、私が探している人物は見当たらない。
嗅ぎ間違い―――?
それにオーダーメイドで調合したならまだしも、市販の香水を使っている男性は多い。
偶然“彼”と同じ香水を使っている男がいたに違いない。
そう思って再び歩き出そうとした瞬間。
「あ、アヤコ?今帰ってきたとこー。迎え寄越せ」
またも聞いた覚えのある声で、今度こそ私は勢い良く振り返った。