Addict -中毒-


次の日、私が目覚めると蒼介の姿はなかった。


私は小さく吐息をつき、旅行に出かけるための準備にとりかかった。



―――


午前11時。


成田空港に到着して、飛行機の時間をチェックし、チケットを取ると、出発ゲートへ歩き出した。


平日だというのに空港を利用する客が多い。


人と人の波を縫って、私がスーツケースを引いた。


荷物詰めすぎたかしら?重い……


なんて思ってのろのろ歩いていると、人の波を縫ってフワリと覚えのある香りが香ってきた。


目を開いて、キョロキョロ辺りを見渡す。


仕事で飛行機を利用する客のなんと多いこと。


スーツを着た男性が意外に多いことに少しだけ驚いた。


だけど、私が探している人物は見当たらない。


嗅ぎ間違い―――?


それにオーダーメイドで調合したならまだしも、市販の香水を使っている男性は多い。


偶然“彼”と同じ香水を使っている男がいたに違いない。


そう思って再び歩き出そうとした瞬間。





「あ、アヤコ?今帰ってきたとこー。迎え寄越せ」






またも聞いた覚えのある声で、今度こそ私は勢い良く振り返った。






< 37 / 383 >

この作品をシェア

pagetop