Addict -中毒-
「泣く女は嫌いでしょ?」
強気に言って、私はハンカチを取り出した。
こんなの失態だ。
そう、失態―――
彼は否定しなかったけれど、肯定もしなかった。
屈託のない、無邪気な少年のような笑顔だけ浮かべていた。
太陽みたいな明るい笑顔を浮かべて、彼は口を開く。
色っぽい唇が動いて、何故か彼のセクシーな唇から紡ぎだされる言葉に耳をそばだて、彼の唇の動きに視線を逸らせなかった。
「イイ女の涙を見るのは好きだよ?」
「お待たせしました。エル・ディアブロです」
彼のグラスの中で赤い色が、鮮やかなまでに色をなしている。
そう、それは
悪魔。