Addict -中毒-
私の言葉を聞いて、彼は私に視線を戻し、そしてびっくりしたように目を開いた。
「ごめん。泣かすつもりはなかったんだけど…」
「は?私泣いてなんかないわよ」
「でも泣きそうだ」
彼はそう言って私の頬にそっと指を這わせた。
涙を流してなんていないのに、それを拭うような仕草だ。
細くて長い、綺麗な指。関節が骨ばっていて、男らしい。
そして思った以上の体温の熱さに、何故かほっとして私の涙腺が緩むのが分かる。
「ごめんね?」
彼は優しく言って、私の頬をゆっくりと撫で上げた。
その体温が、感触が……心地よくて、思わず涙が流れ落ちる。
男の前で泣いたのなんて何年ぶりだろう。
悲しくないのに、それでも私の中の熱い何かは私の冷静な感情を無視して溢れ出す。
自分自身コントロールできなくて、
私は彼の手を乱暴に払った。
これ以上は―――だめ……