朝が待てなくて

「と、とにかくお茶でも飲んでって」


お母さんがやっとそう誘ってくれたのに

「無理。今からデート」と言い捨てて、樹はわたしの手首をむんずとつかむと、もうスタスタ歩き出しちゃっている。


「あ、けど…」


失礼だった気がして振り返ると、ついにこらえきれなくなったのか、お母さんは抱っこしている雫ちゃんの髪に顔をうずめるようにして

………うん、爆笑していた!






「お母さんウケてた」


エレベーターに乗ってから樹にそう告げると
彼は「だろーね」とむくれて言った。


「普通は親にいちいち報告とかしねーもん」


不本意極まりない顔をしている。


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