朝が待てなくて

「自分の気持ちわかった?」


「……うん」


「あいつじゃなきゃダメだったろ?」


「う…ん」


「どんなに逃げたって、逃げられないんだよ。きっと」


樹を好きだという想いからは逃げられない。




「帰る?」


「うん」


わたしがうなずくと、大淀が心底ホッとしたように息をもらした。





「あの、ゴメンなさい!」


ペコンと腰を折り、大淀に最敬礼する。


「こうなるってわかっててつきあってくれたんだよね?」




「あー、説得するより、自分でわかったほうが早いと思ったんだ。


どーせ途中で引き返すだろうと思ったのに、お前ってば意地っ張りで全然引かないし、まるで無防備でさ……。


俺、一瞬理性ブッ飛んだし」



ゴメン、と大淀は照れくさそうに言った。


< 622 / 771 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop