朝が待てなくて

「俺はな、真琴」


静かな呼びかけにつられて顔をあげると、彼の真っ直ぐな視線とぶつかった。




「お前にはずっと……、俺しかいないんだと思ってた」


「いな……いよ、樹しか」




「いや……、大淀の線もアリなんだったら、そっちにしとけ」


そう言った樹の目が、初めてわたしからそれた。手はもうドアにかかっている。




「ないよ、ない……っ。大淀はない。どんなに最低だと思われたって、大淀とはそーゆーんじゃないもん……!」


必死で食い下がった。
だって、このままじゃ誤解されたまま終わっちゃう。




「だけどお前はちゃんとあいつを選んでる」


「選んでないよ。やけになっただけだって言ってるじゃん」




「お前さぁ……」


それた瞳が再びわたしに向けられた。



「中村や塩崎だったらホテルに誘った? やけになってたとしても誰でもいいってわけじゃないんだろ?

あいつだから……、
大淀だから、抱かれてもいいと思ったはずだ」


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