シュートにかけた恋
「みきちゃんありがとう。よかったらお茶でもどう??」
手招きする潤に安堂先生が
「お家の人はいないの??お父様お仕事忙しくて大変って聞いてたけどいつもいないの??IT会社の社長さんだったら仕方ないわよね。潤ちゃん!!寂しくなったらいつでも私の家に来ていいんだからね。」
潤は下を向いたまま、頷くだけ。安堂先生はそんな潤を見てほっとけなくなり「じゃあ、少しだけお邪魔しちゃおうかなぁ!!」
そう言われた潤は一気に笑顔になり手招きして安堂先生を中に入れた。

安堂先生はたまに心配して家に来てくれるがいつも玄関の広さに驚いている。
潤の父は若くしてIT企業を立ち上げ社長となり今では世界進出をしているほど大きな会社なのであるため家もそれなりに大きいに決まっている。
モノトーンを基調として玄関の床は黒の大理石がちりばめられていて合わせるように壁は真っ白でイタリアかフランスか分からないが綺麗な絵が沢山飾られて潤の小さい時の写真も飾られている。

安堂先生が見惚れていると潤がスリッパを出し先に話しかけた。
「みきちゃん!!あんまり見なくていいから中に入って温かいコーヒーでも飲みながら話そうよ。私の話し相手みきちゃんしかいないんだから!!早く!!」

潤に手を引っ張られながら広い廊下を歩きリビングに行くとすごい綺麗なのだ。
入って右側は大画面のテレビに黒の大きいソファにガラスのテーブルがありインテリアとして花が中央に飾られている。
左側はダイニングキッチンになっておりピカピカに磨かれ料理を毎日していることを物語。

ふと、ダイニングキッチンにあるテーブルを見ると手付かずのシチューがあった。

潤は、それを生ゴミに捨ててしまった。そして、ヤカンに火をつけお湯を沸かしている。
安堂先生は潤の家の事情もだいたい知っていたのであえて聞くことはしなかった。
< 9 / 17 >

この作品をシェア

pagetop