ラフ
はぁ、と深いため息が出た。

「ため息ついたら幸せ逃げんで?ほら、すってすって!」

高松に言われて、思わず笑った。
よく、お母さんに言われてたのを思い出した。

「奈緒ちゃん、笑ってるほうが可愛いで」

高松に優しい顔で言われて、少しドキッとする。

「う、うるさいですょ・・・」

顔が赤くなってたらどうしよう、と思って、思わずコーヒーを一気に流し込んだ。
まだ熱いコーヒーを一気に飲んだせいか、少しむせる。

「大丈夫か?そんな一気に飲むから」

席を立つと、水を汲んで持って来てくれた。

「すいませ・・ゲホっ・・・・」

ゆっくりと水を飲む。少し落ち着いた。

「すいません、ありがとうございます」

ふぅ、とゆっくりと息を吸う。
高松は笑っていた。

「なんか奈緒ちゃんって新鮮やなー」

じぃっと奈緒のほうを見つめている。
顔は男前なだけに、少し照れてくる。

「あんまし、みんといてください」

目の前にいる人物が、昨日の人物とホントに同一人物なのか、少し疑問にさえ思えてきた。嫌なやつなのに、ほんの少し、優しくされただけ。それだけなのに、少し、心を許してしまっている自分に腹が立った。

「ところで、奈緒ちゃんはこんな朝はよからなにしてんの?」

高松に聞かれて、はっと携帯の時計を見た。時刻は9時ちょうど。

「・・・それじゃ高松さん。私、待ち合わせしてるので」

そういって軽く頭をさげて、席を立つ。

「えぇ?ほんまに?」

食器を返却口に戻すと、お店をそのまま出て行った。




・・・携帯には泉からの連絡はまだない。
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