ラフ
「あの、今からお仕事でしょう?」

高松は首を横に振って違うと答える。

「私、仕事を断らせてまでなんて、楽しく遊べないです。だから、戻りましょう?」

ぶーぶーと文句を言う高松。
なんだか少し前にも、コレと同じような光景を見た気が・・・

「だって、俺。奈緒ちゃんと遊ぶほうがいいもん」

「私は嫌です。だからほら、戻りましょうよ」

何とかなだめようとするが、一向に話を聞かない。

「じゃ、今度また、デートしてよ」

じっと高松が見つめてくる。多分、ここでOKを出さないと、高松は絶対に仕事に向かわない。ナゼだかそんな確信があった。

「・・・分かりました、今度また、時間があるときに遊びましょう?やから、今日のこところは。ね?」

上目遣いに高松を見てお願いをする。
高松の顔が一瞬、赤くなった。

「マネージャー?お前、奈緒ちゃんに感謝しろよ?しょーがねーから今から向かってやるよ。場所は?」

何とか、仕事に向かうことを了承してくれた。
ホッとする。

「あ、チケット1枚、用意しといて。よろしく!」

プチっと電話を切る。ごめんな!と言って、抱きついてきた。

「ちょ、ちょと!」

ぐいっと離れようと高松の胸を押すが、高松がさらに強くぎゅっと抱きしめてくるため、離れることができない。

「ん~。俺、奈緒ちゃんの為やったら仕事でも何でも頑張れるわ~」

「いらん!そんなんいらん!やからはよどいて!」

じたばたともがいていると、寂しそうな顔を向けてくる。

「奈緒ちゃんは俺のこと嫌い?」

前なら即答で、嫌いと言ったことだろう。ええ、きっと。でも、今はなぜか、嫌いとはいえなかった。

「・・・嫌いでは・・・ないと思う。たぶん」

たぶん、の部分が不満だと文句を言う。

「ほら、仕事。いくんやろ?はよはよ!」

出口へと腕を引っ張っていく。
高松は、はいはい、と引っ張られていった。
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