ラフ
「いい加減にしいや!元はといえば、要君が寝坊したんがあかんのやろ!」

明日香が怒った。

「やのに、奈緒がおらんから、仕事せんって、そんなん、奈緒が知ったらどう思うとおもてんのよ!」

明日香にまぁまぁ、と、堺が制止する。

「要、明日香の言うとおりやで。そんなことしてみ?余計に奈緒ちゃん、戻ってこんようになるで」

奈緒は優しい。凄く、優しい。
確かに、自分のせいで仕事に行かなかったなんて知ったら、きっと、そばにいてくれなくなる。奈緒はそういうやつだ。

「ごめん、明日香ちゃん、香月」

しゅん、とうなだれる泉。
堺がポン、と頭を撫でた。

「ほら、とりあえずは、仕事をこなして。それからや」

背中を押されて、劇場へと向かった。


毎週日曜日は、ミナミにある劇場でお笑いの舞台がある。
今は、それにレギュラーで参加させてもらっている。
楽屋に入ると、朝、家で別れたオリエンテーリングの2人もいた。

「あ、泉さん・・・」

心配そうに駆け寄ってくる2人。

「すいません、今朝、用事があるのに、俺ら泊めてもろて」

「いや、気にすんなって」

笑いながら首を振ると、堺がそうそう、とかぶせてきた。

「用事があるの分かってて、遅までゲームやってたんはこいつが悪いねんから、気にすることないって」

ばしばし、と2人の肩を叩く。
でも、と申し訳なさそうな顔をする2人。

「大丈夫やって、気にすんな」

「すいません」

2人が深々とお辞儀をした。

そういえば、と思い出したように鬼無が教えてくれた。

「今日のゲストさん、誰やと思います?」

「いや、そういえば聞いてへんな」

首をかしげる泉。

「なんと、昨日一緒に飲んでたピースのお2人らしいっすよ!」

「そうそう!2人とも、コレに出るの何年ぶりかってくらい久しぶりに出るらしいっすよ!」

泉と堺は顔を見合わせた。
< 56 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop