ラフ
嬉しさで、目に涙がたまっていくのがわかった。
だけど、その反面、不安もあった。

「ごめん、ほんとにごめん!」

一瞬からだが硬直した。ごめん、の意味がよくわからなかった。

なに?何でごめんなの?
何がごめんなの??

泉の背中にまわした手が、震えた。
もう、離れるかも知れないと思ったら、怖くなって、さらにぎゅっと抱きしめた。

「私のこと、もう、いらんくなった?」

かすれた声で聞く。
家にいた、女の人の方がいいから、だからごめんなんていってるんじゃー・・・

そっと泉の方を向くと、泉の眉間にしわがよっていた。

「なんで」

強い口調で、責めるように言われた。

「なんでそんなこと言うんだよ」

少し、目が潤んでいるように見えた。

「だって、泉君ちに、女の人がいた。インターフォンにも出たし、電話してるときだって聞こえてきた」

口に出すと、記憶がよみがえってくる。せっかく、高松が忘れさせてくれていたのに、また涙が出てきた。

「怖かった・・・泉君、電話出ないし、メールも返事が来ないし。おうちには女の人がいるし」

ぼろぼろと涙をこぼしながら泉を責めた。


「バカ!飲み会なんて言うてたけど、ホントは合コンって知ってた!そんな、合コンに行った次の日に、女の人の影が出てきたら、不安になるやん!」

一気に決壊した。
涙も。
思いも。
言葉も。
何もかも。

「あ、あたしはぁ、泉君と知り合って、まだ、2日しかたってなくって。何にもしら、なくって。・・・ひっ・・・・不安で不安で、たまら・・・っく・・・たまらないん・・・だって・・・・」

必死で声を殺して泣いた。
泉にしがみついて泣いた。
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