ラフ
***** 泉's View *****

小さく震える肩が愛おしかった。
不安だ、としがみつく小さな手が愛らしかった。
必死で、周りに聞こえないよう、声を殺して泣く姿は守りたいと思った。
今、俺の手の中に納まっている、この子は。
一生離さない。

そう、思った。


「奈緒、もう泣くな」

首を横に振る奈緒。

「俺が、奈緒以外の人をみるはずないだろ?」

奈緒の体がびくっと動いた。

「昨日の合コンで、帰れなくなったメンバーを男も女もいったん、うちに連れてってやっただけ」

小さく、奈緒が頷いた。

「インターフォンにでたのも、携帯の後ろでした声も、全部そう。でも、何にもなかった。俺には、奈緒しか、いないんだって」

ぎゅっと抱きしめる力が強くなった。
奈緒の震えがとまった。

ぽんぽん、と頭を撫で、頭にキスをした。
奈緒の抱きしめてる力が、ぎゅっと強くなった。

「なーお?こっち、向けるか?」

頬に手を当てて、髪を耳にかけ、顔が見えるようにする。
目はウサギのように真っ赤になっていていた。
顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。


俺が、こんな風に悲しませた。



奈緒の前で、跪いた。

「もう、二度と。奈緒を悲しませたりしない」

また、奈緒の目から涙がこぼれてきた。
そっと、涙をぬぐった。

「誓うよ。奈緒にはいつも、笑っててほしいから」

奈緒がかぶさるようにして抱きついてきた。
そっと頭を撫でる。
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