ラフ
『まじでー!』

もう、2人の大声を制止する気力もなくなってしまった。

「いいなぁ、どんな人、どんな人?」

「どんなって・・・」

「じゃあさ、彼氏、芸能人にたとえたら誰に似てる?」

「・・・たなからぼたもちの、泉君」

「マジで!?」

こくこく、と頷いた。似ているというより、本人だが。

「はぁ・・・え?でも、その彼氏がおるのに、日曜日に高松さんとデート?」

「いや、それは・・・ちょっと深い事情が・・・」

「なになにぃ??もう、この際やし、観念しーさ」

はぁ、と深いため息をついた。

「土曜日にできた彼氏と、日曜の朝にデートする予定やったんですけど、そのときに遅刻をされまして。連絡したら、電話越しに、女の人の声がして。ちょっとびっくりしたというか、なんというか。まぁ、ちょっと泣けてきまして。たまたま、泣いてるところに、たまたま、高松さんが通りがかって。落ち着くまでそばにいてくれまして、気分転換が必要、と、連れて行かれたわけで」

2人はきゃあきゃあと騒いでいた。

「で、このこと、彼氏に言ってないんですけど、どう思います?」

2人の動きが止まった。

「言ってないの?」

「はい」

「うーん・・・彼氏にばれる可能性は高い…よなぁ」

「・・・ですよね」

高松と昨日いたことは知られている。で、ニュースでされたくらいとなると、泉の耳に入っている可能性は十分にある。
携帯を覗いてみたが、携帯には、メールも何も来ていなかった。
もしかしたら、ニュースを知って、メールをくれてない、の、かもだけど。

そう思うと、少し沈んできた。
< 98 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop