紫陽花の中の猫

そこには、雨で冷えて震えた身体を抱えながら、うずくまる若い女性の姿だった。



俺は『こんな雨の中、どうしたんだろ?』と不思議に思いながらも通過しようとしたが、あまりにもその震えてうずくまる女性をほっとけなかった。



とっさにベンチに向かって歩いていた。



「…こんな所にいたら風邪引くよ?」



俺は女性に声をかけた。



女性は俺の問い掛けに『ビクッ』と反応し顔を上げた。




俺は思わずその女性の顔を見た瞬間、『あっ!?』と声をあげた。




そこには見覚えがある顔がいたからだった。
< 4 / 13 >

この作品をシェア

pagetop