紫陽花の中の猫
そこには、雨で冷えて震えた身体を抱えながら、うずくまる若い女性の姿だった。
俺は『こんな雨の中、どうしたんだろ?』と不思議に思いながらも通過しようとしたが、あまりにもその震えてうずくまる女性をほっとけなかった。
とっさにベンチに向かって歩いていた。
「…こんな所にいたら風邪引くよ?」
俺は女性に声をかけた。
女性は俺の問い掛けに『ビクッ』と反応し顔を上げた。
俺は思わずその女性の顔を見た瞬間、『あっ!?』と声をあげた。
そこには見覚えがある顔がいたからだった。