【完】ラブ☆パワー全開
その時、ポケットの中で携帯のバイブが震えた。
すぐに取り出したディスプレイには“綾乃”の文字。
「綾さん、何かあった?」
下から部屋を見上げた。
「大丈夫?」
何も言わへん綾さんに少し焦った。
「綾さん?」
《仁……寂しい》
「……っ」
思わず携帯を切った。
バイクの鍵を抜き、走り出した。
“寂しい”
とか、そんな可愛い事言われて。
甘えた声で囁かれて。
我慢なんて出来ひんからな。
わかってる? 綾さん。
ドアに、さっき借りて帰った鍵を差し込んで開けようとして止まった。
綾さんは……病人、病人、病人。
自分に言い聞かして、大きく息を吸いドアを開けた。