【短編】保健医の憂鬱
いつの間にか授業が始まったらしく
辺りは静かになっていた


さて…
仕事仕事…


途中だった仕事に取り掛かろうと
パソコンを立ち上げた時

コンコン

ノックの音が響いた

「はい。」

「失礼します。」

返事を待って入ってきた生徒は
体操着姿で両ひざから血を流していた

とっさに立ち上がり
歩き辛そうな生徒に手を貸す

「とりあえず座りなさい。」

近くの椅子に座らせる
瞬間
フワッと甘い香りがして思わず
その男子生徒に鼻を近づける

やはり
この甘いにおいは
この子のシャンプーの匂いだった


男が甘いにおいのシャンプーって
どうなの?

などと思いつつ
手はしっかりと消毒などを
準備していた


「どうしたの?
派手にやったわね。」


「はい…。
ボール取り損ねて…転びました…。」

その男子生徒は
栗色の髪は今風に前髪が重めで
えり足は短く
白い肌はまるで女の子の様
そして
長いまつげの瞳と
ピンクの唇というおまけつきだ
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