龍とわたしと裏庭で③【黒魔術編】
わたしは圭吾さんを見上げた。

「わたし何かまずいこと言ったの?」


「いいや、僕が悪いんだよ」

圭吾さんはわたしの方に手をのばしかけて途中で止めた。

「さわってもいい?」


「いいわよ」


いつもはそんな事きかないのに


温かい手のひらがわたしの頬を包んだ。


「やってしまったかと思った」

圭吾さんがつぶやくように言う。

「まだ僕のこと嫌いになってないよね?」


「大好きよ。どうしてそんなふうに言うの?」


圭吾さんはフウッと息を吐いて椅子に座った。


「ついに僕は捨てられるのかと思ったからさ」


はぁ?


「家に帰りたいって言ったろ? 僕には『この家を出て行きたい』って聞こえた」


「そんなつもり全然なかったけど」


「母も彩名も僕と同じように思ったんだろ。窒息しそうだったもの」

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