幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
ギョッとして顔を上げると、ホークは書き物を続けていた。


「後ろめたい顔をしているぞ」


「隠している事なんて無いよ」


ああ……隠し事の上に嘘を上塗りしてしまった!


「そうか?」

ホークは顔を上げない。

「まあいい。お前の隠し事などたかが知れているしな――帳簿は終わりそうか?」


「あ……うん。ほとんど終わり」


「終わったら先に行って、ミリーに昼食を頼んでおいてくれ。午後からは村へ行く」


「分かった」


絶好の機会だったのにな……

あたしって、バカ?

ううん

バカって言うより、臆病者か。


五月祭が終われば、また魔法修業が待っている。その時はジャルグを見せない訳にはいかない。

そりゃあ、ジャルグを召喚できたのは嬉しいけど――

ホークはあたしの『平たい』召喚魔法をどう思うだろう?

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