幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
あたしと母は、毎年伯爵家で五月祭を迎える。

伯爵家の大広間には、食べ物がたっぷりと用意されていて、この日ばかりは使用人にも振る舞われる。


『今年も実り多かれ』


広間のあちこちで祝いの言葉が交わされた。


「我が息子はどこに消えたのかしら?」

先代伯爵夫人が、広間中を鋭い視線で見渡して、ミリーに尋ねた。


「先程、伯爵様お抱えの騎士様が二人おいでになりまして、別室へお入りに」

ミリーが答えた。


「何ですって? 五月祭前夜に仕事を持ち込むなんてどこの愚か者です?」


「職務に忠実な愚か者だと思いますよ」

ミリーは平然と切り返した。


「主人が朴念仁だと、部下もそうなるのね」


『朴念仁』ってホークの事?


あたしは、危うく吹き出しそうになった。

あたしの後ろにいた侍女達は、耐え切れずにむせ返っている。



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