幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
「お気の毒に。では、どなたが庇護者なのかしら?」


一瞬、嘘をつきかけたけど、そんな事をすればすぐにボロが出るのは目に見えている。


「アルス伯爵です。アルス伯イアン·グレイホーク」


尼僧は腰に提げた筒からペンとインクを取り出すと、板の上に字を書き付けた。


「伯爵様の親戚なのね?」


「はい」


これくらいの嘘なら問題ないだろう。


「いいわ。その壁側の棚に尼僧服があるから着替えて」


そしてその後、あたしにとっての悪夢が始まった。


尼僧に起こされた三人は、揃いも揃って文句を言った。


『とても疲れて倒れそうなのに』

そう言って泣きだしたのは、昨夜あたしと一緒に連れ戻された金髪の少女、ウイローミア。

どこだかの騎士の娘で、母親を亡くしたためにここに預けられる事になったという。

か弱いなら、夜中に逃げ出さないで寝てればよかったのよ。

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